「荊で行われた実験は、人を"造り替える"」
ゾワリ。
身震いがする。言葉の残酷性からではなくアルトの無機質な表情に、だ。
世界を何処か一歩手前から見詰めているようだった。
「造り替えた人間は二度と元には戻らない、失敗してようがなかろうが傷は癒えやしない」
ぎゅっと強く、胸のあたりの服を握りしめている。心の傷は彼の中で今なお増幅していると言うのか。
彼も実験の対象となった身、どれだけの苦痛が生まれたのか、無情にもそんなことを思ってしまっていた。
(無慈悲な世界だ、本当に)
月はぼんやりとアルトを見て、上を見上げる。
────暗い錆び付いた天井。
太陽は閉ざされ、重い鉄と錆だけが地下世界を圧迫する。
仕切りに胸に走るのは、太陽を焦がれる気持ちではない。憎しみにも似た憎悪の気持ちなのかもしれない。
嗚呼、此処は暗い。
上はあんなにも光に満ちているのに、此処は闇だ。一人ぼっちにさせる、なんの罪もない人間が独りにさせられる悲しい場所。
「……一旦戻ろうか。私の家に来るといいよ」
────咄嗟に握られた手の温度に私の意識は戻ってきた。
空気を壊すように神奈がアルトと私の手をとったのだ。アルトを見ればもう元の雰囲気に戻っていて、内心ホッとした。さっきのアルトはどうにも、アルトじゃないようで怖かったから。
(彼の闇が見え隠れした瞬間だった)

