悪態をつきながら門の向こうへ足を入れると、泥土だったはずが、一気に乾燥地が広がっていた。
「アルト……これ」
「湿地から乾燥地へ急激に環境が変化したんだ」
よく見れば環境の変化についていけず、空気も生ぬるくなってしまっている。
正直こんなところに人が住んでいるとは思えない。
「アルトは、なんでこうやって街を回るの?」
いつもふらふらと、まるで様子を伺いに行くみたいに街を徘徊する。狙われている身だというのに、そんな簡単に周囲に姿を現してしまっていいのだろうか。
ひたすら前へと進むアルトは怪訝そうな顔をして言った。
「…狙われるのは俺だけじゃない。確かにあいつらは俺を集中的に狙ってるけど、他の人間だって捕らえられる」
「……つまり、巡回してるってこと?」
「簡単に言えばな」
「意外」
失礼だと思うけど、アルトは全然そういうことをするようには見えない見た目をしている。人は見かけによらないとはまさにこの事か。妙な納得をしながら、小走りで彼を追いかけると景色が変わってきたことに気づいた。
屋根が見え、人の声も聞こえる。
よく見ると、殺風景の中、目の前に少し古びた服を着た若い女が立っていた。

