「凛子ちゃん!」
思うまま叫ぶ。
アルトではないと確信した今、脳内には危険という文字しか浮かんでいない。
しかし凛子は月の声を聞かず、樹木の下の影に近づいていく。直様月も駆け出して凛子の後を追い掛けた。
「月ちゃん」
「!」
名前を呼ばれて足を止めると、漸く顔が露わになった。
同時にホッと体の力が抜ける。
「……なんだ、」
「なんだ、って酷くない?」
影の正体は、眞田だった。
先程よりゆっくりと近づき困惑している凛子ちゃんの頭を撫でた。
「お兄ちゃんじゃなかったの…」
「凛子ちゃん、この人はアルトの友達だから安心して大丈夫。ほら、戻って琉くん達と遊んでよ?」
そう言うと、凛子ちゃんは再び笑顔になって琉くん達のほうへ戻って行った。
戻ったのを確認してから振り返ると眞田はへらっと笑う。
「俺、あいつとお友達になった覚えはないんだけど」
「……誤魔化すために言っただけです。ところで眞田さんは何でこんなとこに?」
不審な目で男を見上げると、彼はさも楽しそうにポケットに両手を突っ込んだ。

