不恰好に作られたブランコが軋んで揺れて、三人の子供達の笑い声が木霊する。
特に凛子ちゃんはブランコが好きなようでおどおどしていたのが嘘のようにはしゃいでいた。
「アルト兄ちゃん達遅いね」
楊くんが教会の本堂に目配せながら言った。それに琉くんが頷く。
「また痛いお話かな…」
「痛い?」
「うん、この前ねすっごく怖いお話聞いちゃったの。体をね、ぐちゃぐちゃに…したりとか」
笑い声がピタリと止まった。
琉くんの怯え具合に相当グロテスクな内容だったに違いない。
私ですら死体廃棄場にいたことや、人体実験が行われていることを知った時、衝撃を受けたのだ。彼等が受けたしまったトラウマは、相当なものだっただろうに。
「…だから、俺たちアルト兄ちゃんが心配だな」
心震わすような声色で、楊くんが小さな両手を握り締めていた。
…子供ながらに何かを感じ取っているのかもしれない。
「アルト兄ちゃんが痛い目に合うのはやだよ」
「私もいやだ。お兄ちゃん、すっごく優しいもん!」
あの鉄仮面が外れる瞬間を見てしまった今、この子達が彼にとってどんな存在かは明白だった。

