地下世界の謀略






部屋を出た月は、暫く枯れ果てた樹木の下で佇んでいた。

胸を押さえて心の臓が動いているのを再確認すれば、不思議とあの銃口を突き付けられた状況を思い出した。




───衣を通じて感じた冷たい銃口。

この世界が殺しを必要としているのだと、言いのけた彼のまなざし。


それら全てが、荊から逃げるための彼の命綱ということを暗に示している。




「月姉ちゃん!」


「琉くん、」

「兄ちゃん達お話し中なんでしょ?僕たちとお話しよーよ!」


ふにゃりと柔らかそうな頬をくずして笑いかけてきたのは琉くん。後ろの方で凛子ちゃんと楊くんがぎこちなく手を振っていた。

琉くんは返事をする前に私の手を引っ張り、彼らの元へ走り出した。




(……どうか、)


引っ張られた幼いながらにしっかりとした力強さに、"終わり"が来ないことを願ってしまった。