「……頼もしいよ、本当に」


ふっと漏れた小さな笑みに、月は安心したようにアルトの少し後ろを歩き出す。
まだ隣には並ばない。

もっともっと、彼を知り世界を知り、彼の隣を歩けるようになれるようになるまでは。この距離で彼の行く道について行く。






ーーーーーーーーーカツン、と足を進めるたびに足音が空間に響いた。

懐かしいこの感覚、私がこの世界に落とされた日を思い出さずに入られない。この世界の元凶から逃げていたのに、今度はそいつらを捕まえようとしているなんて、なんだか笑えてきてしまう。

いつ来ても不快な臭いが漂うこの空気に、慣れ始めたのはいつからだろう。


「うんなかなかいい臭いがするね」

「…それは気にするのやめてくれ理貴さん」

「いや何度来ても慣れないんだよこの臭いだけは」

「死体焼いた臭いに慣れたら病気だろ…」

「あの、やめて。死体の臭いとか言わないでアルト」


そこは忘れてたいポイントだよ。

軽口を叩きながら進む。
神殿まではこのパイプ管の道が一番の近道だった。こんな臭いのするところから神殿までなんていう大層な場所に繋がってるなんて、道の構成どうなってるんだろうか。………文句だけは増えてくなあ。


「ねえ月ちゃん。地上世界ってどんなところだったの?」

「だいぶ急ですね」

「まあ細かいことは気にしないで」

「…まあいいですけど。そうですね、あそこはなんというか、気楽な場所だったように思えます」



気楽すぎて、物足りないくらい。