幼い頃から大人しい性格だった私は、進んで自ら話したりするのが苦手だった。
みんなの前に立つなんてもってのほかだし、それこそ代表なんて役割も全力で拒否。
そんな日々を過ごしてきた私には、もちろん友達なんて出来るハズもなく…。
今もわいわいと賑わう教室で、こうして1人本を読んでいる。
(あ…このセリフ好きだな…)
時折本を読んでいて好きなセリフを見つけたら、こうしてちいさなノートに書き写す。
(よし…。えっと…続き続き…)
シャーペンを置いて、再び読書の世界へ入ろうとしたその時。
ポンッと肩を叩かれた。
「おはよう!月島!」
「………」
元気に挨拶してきた人物に、私はポカーンと口を開けて固まる。
「あれ?月島?おーい」
「あ…お…おはよう…。錐谷君…」
手を目の前で左右に振ってくる彼にハッと我に返る。
「おぅ!おはよ!」
小さく挨拶を返すと、彼はニカッと笑ってもう一度挨拶してくれた。そして自分の席へと歩いていく。
彼の名前は錐谷紘君。明るくていつも元気で、私とは全く正反対の男の子。
「おっす紘!」
「おはよう錐谷君!」
「おう!みんなおはよ!」
「紘ー!またギリギリかー?いつかその内アウトになるぞー?」
「大丈夫だって!何だかんだで今まで遅刻ゼロだし!」
「すっげぇ自信!」
そんな彼だから、周りにはいつもたくさんの人が。
(すごいな)
明るく周りを照らして…。
「…太陽みたい…」
思わず出してしまった声に反応したかのように、錐谷君がこっちを振り返った。
「!」
やば…。聞こえちゃったかな…。
ビクッと体を震わせて錐谷を見ると、ニカッと笑って手を振ってきた。
その笑顔に私はドキっとして、手を振り返さずに目を反らしてしまった。
「?」
錐谷君は首を傾げつつも、クラスの人との会話を再開した。
私にいつも声をかけてくれるのは、錐谷君だけだった。
誰にでも優しくて、明るくて…。
私には…とても眩しい…。