笑顔のsign



足を遅めお兄ちゃんにメールを打っていた。
…後ろからいきなり抱きつかれて口を抑えこまれた。
「…!!…ふっ…ん!…」
振り切ろうとしても力が強く私には無理だった。
「…ねえ?…おじさんと良いところいかない…?」
首筋にかかる生暖かい息…気持ち悪い…!
私は無意識に心の中で名前を呼んでいた。
…お兄ちゃん…お兄ちゃん…お兄ちゃん…!!
ドカッ....
背後で何かを殴った音がした。
恐る恐る振り向くと足元には知らない男の人が倒れうずくまっていた。
そっと見上げると同時に私は抱きしめられた。
「ユリ!!」
その時に誰なのかすぐ分かった。この暖かさは...
「…お兄ちゃん...!」
安堵が込み上げる。
「…な、なんだよ…お前…」
うずくまっていたはずの男の人が手持ちのバックから怪しげに光るものを取り出す。
お兄ちゃんは私を守る様に背後に押しやった。
「…おれの邪魔するなよ…!」
すこしずつ足早になり私たちに向かって走ってきた。
ザッ…
言葉にならない程の鈍い音が響く。
地面には赤くも黒くもない生暖かい液体が滴る。
目の前立っていたお兄ちゃんがゆっくり崩れ落ちる。
「…お兄ちゃん…?」
私はお兄ちゃんをそっと抱き抱える。
その時にはもう息がなかった。