「あ、おはようございます。」

「ん…おはよ。」

「お休みの日とはいえ珍しく朝寝坊ですねぇ。なにか夢でも見てたんですか?」

「んー、シンデレラ?」

「シンデレラですか!私も大好きです!」

「……そう、でも君はシンデレラにはなれなかったんだよ?」


ああ、そんなこともありましたねと彼女は笑う。



「そうじゃなくて、魔法使いさんに恋したってだけの話です。ていうかむしろ、魔法使いさんが王子様だったんですよ!」

「ははっ、なにそれ。」



彼女と出会った日からもう何年経っただろう。
恋人になって一緒に住むようになった今でも彼女は敬語のままだ。

癖なんです、と少し膨れる彼女もとても可愛くて、きっとどんな姫にもなれるだろうなと思った。


そのどんな場合でも俺を選んでくれたらいいのにな、そう思いながら。


            
        「シンデレラ」end