派出所内
 ミュージックMが、終わる。

 博恵は、ボーっとしながら、窓腰から外を見ている。白い世界を、じっと見つめている。

アフター・ビートたちの姿が、見えているつもりのようだ。
携帯電話で、文字を打っている宏。

携帯電話の画面には、「料金は10万円かかります。1、Yes。2、No」と表示された。

宏は、その料金の高さに驚いた。顔面が蒼白した。そんな、お金はない。迷いに迷った。勇気が出ない。手が震えている。

でも、奇跡を起こしたい。奇跡を起こすのは、神ではない。彗星でもない。自分の強い意志だ。

奇跡を起こすのは、「1歩、踏み出す勇気だ」。

宏は、勇気を振り絞って、「1」のスイッチを押した。

あー、やってしまったー。もう、後悔できない。一瞬にして、10万円が、吹っ飛んだー。

 博恵、毅然と宏の面前に立っている。頬を膨らませている。

 博恵の背後にあるドアの窓には、白く光り輝く微粒子物質に覆われている。外の景色が、全く見えない。

 だが、その白く光る微粒子物質は、派出所内にまで入り込んできた。博恵や宏の足元を、ただよっている。徐々に、充満して行く。

 宏だけには、その白く光る微粒子物質は見えている。
博恵には、見えていないようだ。

博恵「宏ー。交差点に行こうよー」

 じっと、携帯電話で遊んでいる宏をにらみつけた。