しかし彼女は「本当に嬉しかったのよ」と可愛らしくクスクスと笑い、続けてこう言う。


「それでね、一緒にケーキを作ってもらえないかな、と思って、お願いに来てみたの」

「え?」

「あたし、見栄を張って、美味しいケーキを作る、って椎橋君に言っちゃったんだけど、丸いおにぎりもボールみたいになっちゃうくらい、ほんっとに不器用で……。それだから、ケーキなんて作ったことがないし、瀬川さんなら、椎橋君の好みをよく知ってると思って」

「うーん……」

「ダメ、かな」


うーん、どうしたものだろうか……。

丸いおにぎりがボールみたいになってしまうとしても、そんなものは、ナオに食べさせたい、という気持ちでカバーできると思う。

こんなに一途にナオを思っているのだ、出来上がったケーキが、たとえ少々見た目が悪かったとしても、ナオならパクパク食べるはずだ。

だって自分の彼女なんだもの。


問題は、彼女と一緒に作るとして、部員総出で馬車馬のようにケーキを焼きまくる傍ら、どこまであたしが彼女に手を貸せるか、である。

ナオの無理難題な要求を断った経緯もあるし、これは莉乃たちに相談せねば……。