それなら、なんで莉乃とナオなのだろう。

美味しいものを作りたい、という部分で、いつもタッグを組んでいる2人なのに、揉め事だなんて、なかなかどうして、考えにくい。


「あ、カナ。どうしたの? 入らないの?」

「穂乃花……。うーん、なんか、莉乃とナオっぽい人が、中で言い合いっぽいことをしてて、入りそびれちゃってるところなんだよね」


すると、入ってもいいものだろうか、と考えているところに、ちょうど穂乃花が来て、あたしはそう理由を説明し、家庭科室を指さした。

けれど穂乃花は、困ったような、呆れたような顔をして、少しもためらわずにドアを開ける。

そして、言い合いをしているのが莉乃とナオだと確認すると、腰に手を当て、言うのだ。


「もう諦めなよ、ナオ君。カナは、あたしたち家庭科部の大事な戦力なの、ナオ君のためだけにケーキを作らせるわけにはいかないのよ」


いつも温厚な穂乃花には珍しく、少し怒っているようにも聞こえる声に、ナオは一瞬、しまった、という顔をし、しかしすぐに、二ヘラ~とした締まりのない作り笑いを浮かべた。

え、え、どういうこと?

すぐには穂乃花の言ったことが理解できず、改めて穂乃花の顔を見ると、彼女は言う。