「カナー、俺、彼女できた!」

「さっさとフラれちゃえ、ナオなんか」


そんなあたしの諸事情を知ってか知らずか、いや、バカなのだから、ちっとも知るはずがないナオは、それからすぐに、彼女ができたと意気揚々と報告をしてきて、あたしはいつものように憎まれ口を叩いて適当にあしらった。

フラれてから、わずか1週間後のことである。


「おめでとう、くらい言えないわけ?」

「言えるわけないでしょ、バカ。……そうね、もうすぐクリスマスなんだから、新しい彼女のためにも、せいぜいフラれないように頑張れ、くらいしか今のあたしには言えないわね」

「ちぇっ、可愛くない」

「結構」


ここまでくると、よくもまあ、ほいほいと彼女を作れるものだと逆に感心してしまって、ため息さえ出てこないのがあたしの本音だ。

ただ、新カノさんにとっては、ナオが初めての彼氏なのかもしれない、と思うと、十中八九、クリスマスを楽しみにしているはずで、その一大イベントを前に愛想が尽きるような失態をするな、と釘を刺すのが、あたしの役目と思う。


「なんだよー、カナに言って損したし」


そう言ったナオは、面白くない顔をして教室を出て行くと、ふと何かを思い出したようで、顔だけをあたしに振り返ると、こう言う。