その夜、廉君のご両親と4人でお食事をした。

ドラマなんかでよく見る、お金持ちの食事シーンを想像していたあたしは、実はとても不安だった。

テーブルマナーは一応知っているけれど、完璧だという自信はないし、魚料理は、どうしても上手に食べられなくて苦手だったりする。

マナーもなっていない娘と思われたら廉君に申し訳ないと思っていただけに、食卓に並んだ料理を見て、ホッとした。

テーブルにはナイフとフォークを使った堅苦しいものはなく、ごく普通の家庭料理が並んでいた。

すべてお母さんが作ったのだそうで、どのお料理もとても美味しかった。

お金持ちの奥様って、綺麗に着飾って何もしないのかと思っていたけれど、廉君のお母さんはあたしのママと何も変わらない。

むしろずっと家事が上手な印象を受けて、何だか凄くうれしかった。

お料理を和食中心の家庭料理にしたのも、きっと、お母さんがあたしを気遣ってくれたのだと思う。

お菓子だけじゃなく、お料理もとても上手で、優しい気遣いのできる素敵な女性。

あたしの中で、廉君のお母さんは、いつしか理想の女性になっていった。