【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~


「香織?どうしたの?ボーッとして」

廉君の声に驚いて我に返る。

いつものようにニコニコと笑って、リビングのソファーに座るように勧めてくれている彼に、自分の考えが恥ずかしくなって、必要以上にブンブンと頭を振って言い訳してしまう。

「なっ、なんでもない。
スッゴクお部屋が広いから、びっくりしすぎて声も出なかったのよ」

ごまかし笑いをしながら勧められたソファーに座ると、廉君も隣にかけてキュッと手を握る。

「そう?気に入ってくれた?
寝室はどちらでも好きなほうを使ってくれていいよ」

「廉君が使っているお部屋があるんじゃないの?
空いているほうでいいわよ」

「香織が好きなほうを使えるように、今朝掃除をしてもらったし、僕はその時の気分で両方を使っているから、どちらでもいいんだ」

「そうなの?すごいね。
こんなに広いお部屋で寂しくない?」

「クスッ、香織に会えなくて寂しいなあって思った事はあるけどね。
部屋が広くて寂しいとか考えたことも無いよ。
…もし僕が寂しくて眠れないって言ったら添い寝でもしてくれるの?」

「なっ…バカね。何言ってるのよ?」