「香織?どうしたの?ボーッとして」
廉君の声に驚いて我に返る。
いつものようにニコニコと笑って、リビングのソファーに座るように勧めてくれている彼に、自分の考えが恥ずかしくなって、必要以上にブンブンと頭を振って言い訳してしまう。
「なっ、なんでもない。
スッゴクお部屋が広いから、びっくりしすぎて声も出なかったのよ」
ごまかし笑いをしながら勧められたソファーに座ると、廉君も隣にかけてキュッと手を握る。
「そう?気に入ってくれた?
寝室はどちらでも好きなほうを使ってくれていいよ」
「廉君が使っているお部屋があるんじゃないの?
空いているほうでいいわよ」
「香織が好きなほうを使えるように、今朝掃除をしてもらったし、僕はその時の気分で両方を使っているから、どちらでもいいんだ」
「そうなの?すごいね。
こんなに広いお部屋で寂しくない?」
「クスッ、香織に会えなくて寂しいなあって思った事はあるけどね。
部屋が広くて寂しいとか考えたことも無いよ。
…もし僕が寂しくて眠れないって言ったら添い寝でもしてくれるの?」
「なっ…バカね。何言ってるのよ?」



