「…廉…く…ん」
「独りで抱えないで。
独りで苦しまないで。
言っただろう?
その心も身体も髪の一房までも君はもう僕のものだって。
君の苦しみも、悲しみも、痛みも、罪も…全てを受け入れる覚悟はあるよ。
僕らは二人で一人なんだよ」
香織は暫く俯いていたが、やがて自分を奮い立たせるように力強く頷いた。
気丈に振舞っているが、度重なるショックで彼女が受けた傷は、肉体的にも精神的にも相当大きい。
父親を助けたいという強い気持ちが彼女を駆り立てているが、本当なら座っているのもやっとだろう。
香織はとても強い。
僕よりも遥かに強い精神力を持っている。
だけど僕は知っている。
限界を超えたときの彼女の脆さを。
だから怖かった。
小村のことを問えば、張り詰めたものが切れてしまう気がして…
三つ目の約束を口にすれば、香織の心を壊してしまう気がして…
目の前の道を避けては通れないと知っていても…
進むのがとても…怖かった。



