――君の全てが欲しいんだ―― 感情のコントロールを失った僕の声は上ずっていて 声というより空気が擦れるような音が喉の奥から出てきただけだった。 「え?なぁに?」 彼女には聞き取れなかったらしい。 不思議そうに見上げる疑いの無い眼にハッとして、自分の暴走に歯止めを掛けた。 まだ、ホテルはオープンしていない。 自分に自信が持てたなら… そう決めたはずだ。 今はまだ、それを告げる時じゃない。 香織の不安を拭い去るように笑って、一応の謝罪と共に腕を僅かに緩めた。