「…生…きてる?」
「ああ、安田さんは生きている。
とにかく落ち着いて。僕が止血するから香織は安田さんに呼びかけ続けていて。
いいね? ほら、救急車の音が近づいてきているだろう?
さっき電話したから別荘からもじきに人が来る。
安田さんは大丈夫だよ、きっと助かる。
いや、僕らが助けるんだ」
安心させるべく力強く断言したものの、止まる様子の無い出血に表情が硬くなる。
だが香織には効果があったらしい。
唇をキュッと噛み締めると、コクリと頷いて、直ぐに包帯の上から傷口を押さえた。
包帯から滲む血が指の間からジワリと流れだす。
それを止めたくて、小刻みに震える小さな手に自分の手を重ねた。
「僕が代わろう。傷口を確認するから包帯を切るよ」
「いいの、あたしがやる。あの人が止血してくれたの見ていたから、この上からでも昨日の傷の位置は判るわ。
あたしが…あたしがお父さんの血を止めるの。
あたしが助けるの。お父さんは…あたしを庇ったんだもの」
「昨日の…傷?」
香織の言葉にハッとした。
安田さんは小村に刺されたのだとばかり思っていた。
だが、傷が開いて出血しているのだとしたら…僕は大切なことを見落としていたことになる。
ドクンと身体の血が逆流した。



