香織の身体には幾つもの内出血があった。
容赦なく蹴られたのだろう。
その数は腹部周辺だけで十箇所は下らない。
更に全身を照らしていくと、足には広範囲に渡る擦過傷があり、不自然に乱れた髪の一部には血がこびり付いていた。
安田さんの影になっていた時は気付かなかったが、良く見ると洋服には靴跡が幾つも残っている。
きっと同様の傷が身体中にあるに違いなかった。
震える指で香織の服を整え、乱れた髪を軽く撫でつけ、頬に飛んだ血を拭ってやる。
それでも震えは治まらず、鎮まらない怒りを拳に託して地面に叩きつけた。
小村が香織を何度も蹴り、髪を掴み、引きずる様子が瞼の裏に浮かんでは消える。
彼女は痛みに悲鳴を上げたことだろう。
止めてと叫んだかもしれない。
僕の名を呼び助けを求めたかもしれない。
その時に傍にいなかった悔しさが、形となって頬を伝った。
ハラハラと幾つもの粒となって香織を濡らし、頬に残る汚れを洗い流していく。
あれだけの暴行を受けながらも顔に傷がないのは奇跡だった。



