【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~


香織の身体には幾つもの内出血があった。

容赦なく蹴られたのだろう。
その数は腹部周辺だけで十箇所は下らない。

更に全身を照らしていくと、足には広範囲に渡る擦過傷があり、不自然に乱れた髪の一部には血がこびり付いていた。

安田さんの影になっていた時は気付かなかったが、良く見ると洋服には靴跡が幾つも残っている。

きっと同様の傷が身体中にあるに違いなかった。

震える指で香織の服を整え、乱れた髪を軽く撫でつけ、頬に飛んだ血を拭ってやる。

それでも震えは治まらず、鎮まらない怒りを拳に託して地面に叩きつけた。

小村が香織を何度も蹴り、髪を掴み、引きずる様子が瞼の裏に浮かんでは消える。

彼女は痛みに悲鳴を上げたことだろう。

止めてと叫んだかもしれない。

僕の名を呼び助けを求めたかもしれない。

その時に傍にいなかった悔しさが、形となって頬を伝った。

ハラハラと幾つもの粒となって香織を濡らし、頬に残る汚れを洗い流していく。

あれだけの暴行を受けながらも顔に傷がないのは奇跡だった。