【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~


気持ちを切り替え、冷静に香織の脈を診る。

脈はしっかりしており、怪我をしているにしても安田さんほど重傷ではなさそうだった。

再び安田さんの腕に取り組みながら、父に救護を要請する。

次いで警備に小村追跡の指示を出し、なんとしても見つけ出せと発破をかけた。

電話越しに父が何か訊いていたが、一方的な説明だけ済ませると『とにかく急いで!』と電話を切った。

心配する父の姿が浮かんだが、今は一秒だって無駄にはできなかった。

意識を失っても尚、娘を護ろうとする父の力は生半可なものではない。

安田さんの関節がギシギシと嫌な音を立てたが、ここで止めることはできなかった。

折れる可能性を心で謝罪してから、掛け声とともに満身の力を込める。

ズルリと腕が離れ、安田さんは勢いで人形のように転がり仰向けに倒れた。

「香織、診るよ」

意識の無い香織に断りを告げ、ボタンに手を掛ける。

だが血を吸ったシフォン素材のフリルが指に張りつき、逸る気持ちをあざ笑うように邪魔をした。

「時間が無いんだ。ゴメン」

やむなくブラウスの下から3つほどボタンを引きちぎり、胸の辺りまで引き上げて診る。


月明かりの下、白い肌が浮かび上がった。