この世にいない人に助けを求めるなんて…。
そんなことをしてなんになる?
冷静になれ。
落ち着いて考えろ。
僕はまだ全力で彼女を救う努力をしていない。
血の香(か)に呑まれて一瞬でも弱気になってしまうなんて、どうかしていたんだ。
それまでの不安がスウッと退いて、神経が研ぎ澄まされていく。
難渋していた交渉が一気に流れに乗った時と良く似た感覚だった。
怖いものが無くなり、不可能でも可能に出来る気がしてくる。
圧倒的な力に背中を押されるような、この感覚。
胸の奥から、二人ともきっと助けてみせると強い気持ちが湧き出てくる。
ー香織を護るのは神でも悪魔でも百合絵さんでもない。
ーこの僕だ!
そうさ、僕にはできる。
誘拐や暴漢に襲われることを想定したシュミレーションは、子供の頃から何度も受けたし、こういう時の応急処置も学んだ。
いつもと同じ。
仕事モードの浅井 廉になればちゃんと対応できるはずた。



