こんなとき彼ならどうするだろう。
そうだ…。
彼はたった一人で香織を助け、安田さんに適切な処置を施し、冷静に警察へ通報していたじゃないか。
あの時彼が置かれた状況と今の僕に、どれほどの違いがあるというんだ?
雷に打たれたような衝撃だった。
こんな時でも彼ならばきっと最後まで諦めない。
決して奇跡に縋ったりもしない。
どんな状況でも自分の力を信じ、命を懸けて恋人を助けるはずだと思った。
彼は何があっても自分を信じる強さを持っている。
だが僕は強さを求めるばかりで、自分自身すら見えていない。
彼との決定的な違いに、温室育ちの甘えを突きつけられたようだった。
ー自分を信じられないお前に、彼女が護れるのか?ー
彼が僕を見たら、きっとそう言って冷笑するだろう。
確かに僕は自分を信じきれていなかった。
目の前のことで精一杯で、冷静に状況を判断する事も、先を見越した的確な行動もできていなかった。
だから子供なのだと一笑されてしまえばそれまでだ。
……それでも…僕は浅井を継ぐ者だ。いずれ彼以上の力を求められるときが来る。
その時にも、今みたいに誰かに救いを求めるのか?
―いや、違う!
彼に対する羨望と嫉妬心。
それが僕の萎えかけた心に火をつけた。



