【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~


こんなとき彼ならどうするだろう。

そうだ…。
彼はたった一人で香織を助け、安田さんに適切な処置を施し、冷静に警察へ通報していたじゃないか。

あの時彼が置かれた状況と今の僕に、どれほどの違いがあるというんだ?

雷に打たれたような衝撃だった。

こんな時でも彼ならばきっと最後まで諦めない。

決して奇跡に縋ったりもしない。

どんな状況でも自分の力を信じ、命を懸けて恋人を助けるはずだと思った。

彼は何があっても自分を信じる強さを持っている。

だが僕は強さを求めるばかりで、自分自身すら見えていない。

彼との決定的な違いに、温室育ちの甘えを突きつけられたようだった。


ー自分を信じられないお前に、彼女が護れるのか?ー


彼が僕を見たら、きっとそう言って冷笑するだろう。

確かに僕は自分を信じきれていなかった。

目の前のことで精一杯で、冷静に状況を判断する事も、先を見越した的確な行動もできていなかった。

だから子供なのだと一笑されてしまえばそれまでだ。

……それでも…僕は浅井を継ぐ者だ。いずれ彼以上の力を求められるときが来る。

その時にも、今みたいに誰かに救いを求めるのか?

―いや、違う!

彼に対する羨望と嫉妬心。

それが僕の萎えかけた心に火をつけた。