「香織、香織! しっかりしろ! 僕の声が聞こえるか? 応えてくれ! 香織っ!」
自分の心臓が耳元で五月蝿くて、香織の脈も取れない。
香織の肩に食い込んだ安田さんの指は血色を失い白くなるほど強く、強引に引き剥がせば肉まで削げそうだった。
必死に呼びかけながら指を一本ずつ剥がしに掛かるが、潤滑油のようになった血が指を滑らせ、何も進展しないまま時間だけが過ぎていった。
焦りがパニックを連れて来る。
頭が真っ白になった。
どうすればいい?
このままでは二人とも失血死してしまう。
……死…?
香織が…死ぬ?
僕はこのまま香織を護りきれず失うのか?
助けることもできず、ただ見ているしかできないままーー…?
そんなのは…嫌だっ!!
こんな形で君を失うなんて…嫌だ…嫌だっ!
「嫌だ! かお…りっ、香織…お願いだ。
僕の声を聞いて…っ!
安田さん…香織を放して…放してっ!」
香織を護る腕を、肩を、背中を何度も叩いて叫んだ。



