きっと香織は近くに居ると確信して進む。
やがて森の中心が見えてきた。
直径10メートルほどに切り開かれた円形広場で、夏の合宿で武さんや聖さんと何度もキャンプをした馴染みの深い場所だった。
枝を握りなおし、視界を遮る枝の間から様子を窺うと、白い月の光が斜めに射し込み、闇色の森に広場を浮き上がらせていた。
乏しい光源ではあるが、闇に慣れた目には状況を知るに十分だった。
香織は安田さんに護られるようにして、広場の中心に倒れていた。
その髪に、顔に、洋服に…赤黒い液体がベッタリと付着した状態で。
悪い夢だと思いたかった。
大地に染み込む命が、赤黒いシミを作っていくのを呆然と見詰める。
まだ乾かない赤が生々しくぬめり、香織を染めていた。
最悪の状況も覚悟していたつもりだった。
だがあまりにも凄惨な光景に
僕は思わず目を伏せた。



