【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~


小村に刺されなくても、このままでは死んでしまう。


嫌よ。


やっと会えたのに。

やっとお父さんって呼べるのに。

まだ伝えていないのに。



安田さんがあたしのお父さんで嬉しかったって―…



「その傷でどう足掻いても逃げられねぇよ。
大人しく刺されたほうが苦しまずに死ねるぜ」

血の通わない声で告げられる「死」という言葉に頭が真っ白になった。



お父さんを殺さないで―…



何を考える間もなく身体は無意識に動き、二人の間に両手を広げて割り込んでいた。

突然あたしが現れたことで小村はかなり動揺したらしく、お父さんに向けていたナイフの切っ先が僅かに方向を変えた。



そしてそれは―…



真っ直ぐにあたしの胸に向かっていた。