小村に刺されなくても、このままでは死んでしまう。
嫌よ。
やっと会えたのに。
やっとお父さんって呼べるのに。
まだ伝えていないのに。
安田さんがあたしのお父さんで嬉しかったって―…
「その傷でどう足掻いても逃げられねぇよ。
大人しく刺されたほうが苦しまずに死ねるぜ」
血の通わない声で告げられる「死」という言葉に頭が真っ白になった。
お父さんを殺さないで―…
何を考える間もなく身体は無意識に動き、二人の間に両手を広げて割り込んでいた。
突然あたしが現れたことで小村はかなり動揺したらしく、お父さんに向けていたナイフの切っ先が僅かに方向を変えた。
そしてそれは―…
真っ直ぐにあたしの胸に向かっていた。



