【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~

今すぐに会いたかった。

『お父さん』と呼んで腕の中へ飛び込みたかった。

テラスから庭を抜け、闇をぼんやりと照らす外灯が心細げに車の通らない車道を照らしている脇を抜ける。

目の前に森が開けると真っ暗な口を広げるその中へ、あたしは迷わず足を踏み入れた。

追われているお父さんが目立つ公道を歩いてくるとは思えなかった。

お父さんはきっと森にいる。そう思ったら、そこに広がる無限の闇も、怖いとは思わなかった。

お父さんが助けを求めているような気がして、一刻も早く捜さなければという思いで頭の中は一杯だった。

深手を負い、森の何処かで身体を休めているお父さんの姿が浮かんでは消えてゆく。


ねぇ。

お父さんはどんな気持ちであたしを見守っていたの?

本当は自分が父親だと名乗りたかったんでしょう?

愛していると…

会いたかったと…

そう言って抱きしめたいと思ってくれていたんでしょう?