森を抜けた先に月光に白く照らされた別荘は、あの雪の日の光景と酷似していた。

最後の力を振り絞り、足を踏み出す。

フラリとおぼつかない足元に、不意に落ちた影。

不審に思い顔を上げると、会いたくない男が物陰からユラリと現れた。

月の反射を受けて冷たく光る刃をペロリと血のような赤い舌で舐め、血走った目を細める。

「―…小村…」

「あんたを殺り損ねたせいで、俺も追われる羽目になっちまった。
こうなったら何が何でも、あんたを殺るしか俺が生き残る道はないんでね。
瀕死のあんたを消したところで俺の株は上がらないが、死ぬよりはマシだ。
…覚悟してもらうぜ」


ニヤリと笑った男の顔が、百合絵を死に追いやった男の幻影と重なって見えた。