夫人を傍で見ていると、一族の女性がどれほど血に縛られているのかを痛切に見せ付けられる。
それ故に、百合子を一日も早く解放し、幸せにしたいという思いは日に日に募っていった。
何も出来ない父親だが、せめて百合絵の望んだとおり、一族から逃れ幸せになってほしい。
それだけが願いだった。
そんなある日、百合子が廉さんの婚約者になったと知った。
まだほんの子供の二人の未来を、一族最年長者である春日家当主が一存で決めてしまったことに、哀しみと憤りを感じた。
どうすれば百合子を救えるだろう。
父と名乗ることも出来ないこの身で、どうやって彼女に近づき、警戒されること無く、追われることのない土地へ逃がすことが出来るのか…。
どれだけ考えても、良い案は見つからず、時間だけが過ぎていった。



