【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~


復讐から暫くして、俺は浅井家への任務を命じられた。

結婚を嫌がり失踪して、10年後に記憶を失って帰ってきた春日 雪が浅井家に嫁ぐ為、彼女が再び逃げ出さないよう監視する役目だった。

彼女が再び逃げ出すことがあれば、『魁鬼』として抹殺せよとの春日当主からの命を受けていた。

自分の孫娘にすら容赦のない春日家当主に、一族の底知れない闇を見た俺は、改めて百合子を一刻も早く解放しなければと思った。


俺はさる有力企業筋から紹介された優秀なボディガードとして浅井家に雇われた。

裏では『魁鬼』として、春日と対立する泉原家に傾(かし)いでいる浅井家当主の動きを探るスパイの役目も担っていた。

俺に全幅の信頼を寄せる浅井家当主の克己様と夫人の雪様。そしてご子息の廉さん。

彼らが良い人であるだけに、心が痛まなかったといえば嘘になる。

だが、俺は百合子を助ける為にも、彼らを欺き続けなければならなかった。