そして、あの哀しい日から5年後…
俺は『魁鬼』として百合絵を死に追いやった尾田をついに追い詰める事となった。
本来なら『鵺』の動くべきところであったはずの制裁だが、一族に泥を塗った尾田に対し、その罪の重さをより残酷に知らしめる為、『魁鬼』が呼ばれたのだ。
百合絵の葬儀にも出席せず、直ぐに新しい妻を娶った事で、瀬名家を始め、五家の当主たちの尾田に対する怒りは相当なものだったようだ。
『魁鬼』となっていた俺にとって、まさに幸運としか言いようのない復讐のチャンスが舞い込んだのだ。
百合絵が俺を導いてくれたのだと思った。
より残酷に、より苦しむように、俺はあいつが百合絵にしたように、山奥の別荘に外から施錠し監禁した。
外部から僅かの光も届かぬよう密封され、必要最小限の粗末な食事のみを与えられる極限の環境の中、一定時間ごとに投影される百合絵の立体映像に、あいつは恐れ戦き、泣き喚き、徐々に精神を蝕まれていった。
ひと月余りで孤独と恐怖に気が狂い、廃人同然になった尾田を、俺は山中に縛りつけ置き去りにした。
1週間後…
そこには野犬に食い荒らされ残骸となった、かつての上司の無残な姿があった。



