その年初めての雪が辺りを純白に染め上げる山道を、俺は必死に走っていた。

雪に包まれた別荘。

ドアを蹴破り室内に駆け込むと、リビングのドアの前で一旦躊躇する。


この先にあるのは何度も繰り返し夢に見るあの日の惨状。


…思い出したくない哀しい記憶。

…見たくない愛しい人の最後の姿。

それでも…

どんなに苦しくても…

彼女に逢いたい…



心を決めてドアを開けると、そこにはいつも夢に見る惨状があった。

愛する人の血に染まった姿。

傍らのテーブルの上にはか弱い声で泣く、産まれたばかりの小さな命。

そして手首に深い刃物の傷を負い、大量の血を流した彼女の腕の中には―…

既に呼吸をしていない、もう一人の赤ん坊がいた。