まさか『鵺』が出てくるなんて、考えてもみなかった。
通常、春日の統御する闇の力と呼ばれているものには二つある。
一つは身内の裏切者を見出し抹殺する『魁鬼(かいき)』
一つは一族の秘密を知り脅かす者を抹殺する『鵺』
どちらも暗殺集団には変わりないが、その本質はまったく違う。
見せしめに、より残酷な仕打ちをする『魁鬼』とあくまでも極秘に一族に関わった痕跡を消す『鵺』
どちらも敵に回すには余りにも恐ろしい相手だ。
会話を聞いていた香織が、青ざめて僕に手を伸ばした。
彼女の不安を察知し、その手を取るとギュッと抱きしめる。
腕の中で震える香織の耳元に『必ず護るから』と囁いた。
安田を追って『鵺』が動き出している事に、父も困惑してるようだった。
「父さん、すぐに安田を捜さないと…。
彼にはもう後はない。きっと香織を狙ってくる!」
ビリッと室内が緊張した。



