「ところで報告って悪戯電話の事なんですか?」
「いや違う。実は…安田が病院から姿を消したんだ」
「何だって? 病院から姿を消したって…目を覚ましたんですか?」
「ああ、実は村田についてちょっと引っかかっていた事があったんで病院へ探りにいったんだ。
そしたら偶然病室で小村が安田を刺そうとして揉み合っているところを目撃して…」
やはり小村も春日の犬か。と、唇を噛む。
香織を案じていた人のよさそうな長身の青年を思い出し、胸が悪くなった。
誰も信じられない…。
目の前の紀之すら、信じても良いものかと疑心が湧き上がってきた。
「もしかしたら村田かもと思っていたんだが、今日の事で確信した。まさか小村のほうが『鵺(ぬえ)』だったとはな」
「『鵺』だって!?」
「ああ、だが大した腕でもないらしい。
手負いの安田に返り討ちにされて逃げられたんだからな。
春日の暗殺集団『鵺』にしてはお粗末な奴だ。今頃は他の『鵺』に消されているだろうな」



