それから16年、香織は輝かんばかりの美しい娘に育った。 この夏休みに恋人に誘われて別荘で過ごすと聞いた六香は、毎日幸せそうに恋人の話をする香織が眩しかった。 俊弥の望んだとおり、香織はこのまま秋山の娘として幸せになるだろう。 両親のような辛い恋ではなく普通の恋をして、いつかきっと幸せな花嫁になる。 血生臭い『一族』などとは無縁の人生をおくるのだ。 きっと俊弥と彼女の分まで幸せになる―… そう信じて疑わなかった。 あの日、香織を迎えに来た運転手が『一族』の使いだと知るまでは―…