夫は彼女を監禁した理由を、表向きは妻の不貞を隠す為としていた。
だが、彼の本当の目的はそこではなかった。
自分を裏切った妻と、その相手への復讐の為だ。
彼は全て知っていたのだ。
妻の妊娠が判った時、部下に相手を探し出すように命じたが、どうしても解らなかった。
本来ならあれだけの情報網と財力で捜して、妻の不倫相手一人を見つけられないなど在り得ないはずなのだ。
だからこそ解った。
信じたくは無かったが、外部の人間で無いとすれば、身内しかいない。
ごく身近な人間へと視点を変えるとおのずと二人の関係は見えてきた。
形だけの結婚とはいえ、妻が自分の腹心の部下と愛し合っていた事実は彼のプライドを粉砕していた。
しかも俊弥は何食わぬ顔で自分を騙し続けている。
二人を許すつもりなど無かった。
監禁状態の妻を医師に診せる事も許さず、産みたければ自分独りで勝手に産めと言い捨てた。
孤独の中、精神的に追い詰められ、たった独りで頼る者もない不安な出産に彼女は苦しむだろう。
難産で苦しもうが、それで命を落とそうが、まったく助ける気は無かった。
それどころか、出産に失敗して親子とも命を落とせばいいとすら思っていたのだ。



