時々聞こえる僕の名前に頬を染め、恥ずかしそうに微笑む仕草一つ一つが愛しくて、今すぐにでも駆け寄って抱き締めたい衝動を抑えるのが難しいほどだった。

木々の間を吹き抜ける風が香織の長い髪を揺らして甘い香りを僕の元へと運んでくる。

ドキドキと五月蝿く鳴る鼓動を抑えるように、深呼吸をしてゆっくりと歩き出すと、その気配を感じて彼女が振り返った。

「廉君!」

その場が光に包まれるような、真夏の太陽よりも眩しい笑顔。

それは僕だけの為に捧げられた、最高の贈り物だった。

その瞬間、1週間の辛かった時間など、瞬時に何処かへ吹き飛んでしまった。

現金だなんて、言わないで欲しいね。

だって…

この微笑に魅了されない男なんて…


絶対にこの世に存在しないと思うよ。