だけど興奮しすぎた身体は、震えと脱力感で思うように力が入らず、あたしは廉君に寄りかかったまま動くことが出来なかった。

泣きすぎたせいで、目が腫れて視界が狭い。

ぼんやりと頭に霞がかかり、思考能力も機能停止状態に入りつつあった。

今日はもう休みたい…

放心状態でぼんやりとそう思った時、おばあちゃんが何かを言った―…

―俊弥はあなたを捨てたわけじゃないのよ―…

聞き覚えの無い名前に、すぐには反応出来なかった。

しゅんや…?

知らないはずなのに何処か懐かしいその響きを辿り、ゆっくりと過去を紐解いていく。

その名前の記憶を手繰り寄せたとき…
あの手紙にあった『俊弥』という文字を思い出した。

その瞬間、それまで機能を停止していた思考が覚醒し、フル回転を始めた。

俊弥…って…あたしのお父さん?

あたしを捨てたわけじゃないって、どういうこと?

顔をあげると、いつもは穏やかなおばあちゃんの顔には、苦悩を思わせる深い皺が刻まれていた。

それを問うのはおばあちゃんを苦しめるのかもしれない。

直感でそう思ったけれど…

それでも、あたしは知りたかった…

「捨てていない?
じゃあどうして…お父さんはあたしをおばあちゃんに託したまま姿を消したの?
どうして迎えに来なかったの?
どうしてあたしを愛してくれなかったの?」

あたしの声は擦れて、まだ少し震えていたけれど…

静かな部屋には十分すぎるほどハッキリと響いた。