パパの口から『義務』という言葉が出たとき、あたしは育ての親にも愛されていないのだと思った。
託されたから仕方なかったのだ。
兄に押し付けられたから、ママはあたしを育てる羽目になった。
パパはあたしを愛しているわけじゃなく、仕方なく義務で育てただけなのだ。
そう思ったら、色んな感情がごちゃ混ぜになった波があたしを呑みこんで、訳が解らなくなった。
冷静になれば解ることだった。
パパやママが本当の娘として愛してくれたからこそ、あたしはこれまで両親の愛情を疑うことがなかった。
封印した過去を、再び思い出すことも無く今日まで幸せでいられたのだ。
理事長先生に諭されるまで、そんなことにも気付かず、自分だけが苦しんでいると思い込んでいた身勝手さを恥ずかしく思った。
パパやママが苦しくなかったはずが無い。
どんな気持ちであたしの言葉を受け止めたんだろう。
本当に悪いことを言ってしまったと思うけれど、心の奥底に溜め込んだものを全て吐き出した事で、わだかまっていたものがようやく消えた気がする。
泣くだけ泣いてスッキリしたら、それまでの不安や苛立ちがスウッ…と消えて、ゆっくりと心が静まっていった。