門の前でタクシーを降り、慌しくアプローチを駆け抜ける。

玄関に向かおうとした時、夏の暑さも吹き飛ぶような涼しげな笑い声が耳に届いた。

香織の声だと脳が認識したとたん、ズキンと心臓に杭を打ち込まれたような衝撃が走る。

もう何年も聞いていないようにすら感じる彼女の声に、痛みを感じるほどに心拍数が上がっていくのを感じた。

この調子では香織の顔を見たとたん心臓発作でも起こすんじゃないだろうか?

一抹の不安を抱えながらも、耳に心地良いその声に誘われて裏手のテラスへと回る。

そこには、母にお茶とお菓子でもてなされている香織の姿があった。


深い緑の木々に囲まれた庭を、心地よく吹き渡る夏の風が、白いサンドレスの裾を揺らす。



会いたくて、愛しくて、夢にまで見た香織の笑顔。



その光景に、僕の心臓は一瞬、その鼓動を止めた