【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~


香織も同じ気持ちだったのだろう。

繋いだ手からビクリと緊張が伝わってくる。

『大丈夫』と伝えるように手を握りなおし、父が示すソファーにエスコートし座らせた。

それから香織の家族に一礼をして向き直った。

「秋山さん、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。
今回の事は危険を軽視し、警戒を怠った僕の責任です。
部下を信頼していたとはいえ、彼女の傍を離れたばかりに最悪の事態を招くところでした。本当に申し訳ありません」

殴られる覚悟で深々と頭を下げると、両親も一緒に席を立ち頭を下げた。

暫しの沈黙の後、秋山氏が口を開くまで、多分10秒も無かったと思う。

だが、それ以上に長い時間に感じた。

「浅井さん、廉君、頭を上げてください。
線路に落下した事はもみ合った上での事故だ。
私はこの件で廉君を責めるつもりはないんです。
廉君、君は大丈夫だったのかい?
随分無茶をして香織を命がけで救ってくれたそうじゃないか。
一歩間違えば君だって命を落としていたんだ。
君が本当に香織を大切に思ってくれている事には感謝しているよ」

秋山氏の寛容な応対にホッとして顔を上げる。

と、同時に投げかけられた次の言葉に全身が硬直した。