プルプル…プルプル…
唇が触れそうになった、まさにその時
タイミングを見計らったように部屋の内線が鳴った。
思わず無視しようかとも思ったが、取らなければ香織を心配した両親が部屋まで様子を見に来ないとも限らない。
この状態を見られるのは流石に拙いと思いなおし、渋々受話器を取ると、父さんの声が受話器を壊さんばかりの音量で聞こえてきた。
『おい、遅いぞ廉!
まさか香織ちゃんを襲っていたんじゃないだろうなっ?』
本当は知ってて邪魔したんじゃないか?と疑いつつ、何の用だとぶっきらぼうに訪ねると、今すぐに二人で応接室に来いという。
香織の体調を理由に断ろうと思ったが、事故の連絡を受け、心配したおばあさんと両親が駆けつけたとの事だった。
流石に香織の顔を見せて安心させない訳にいかない。
10分で支度をすると言い捨て、まだ何か言っている父を無視してブツッと切った。



