ブースを出ると、涼しい夏の夜風が心地良く火照った身体の熱を奪っていく。
同時に暴走ゾーンに突入していた感情も、ほんの少し理性を取り戻してくれた。
『僕のベッドでいいか?』と視線で問うと、彼女は一度目を伏せ瞬きで応えた。
何も言わなくても解る…
この感覚がもう一度この手に還ってきたのだと思うと嬉しくて、込み上げてくる愛しさを止めることなどできそうに無い。
彼女を怖がらせないようしたいが、緊張しているのは彼女だけじゃない。
僕だって経験など無く、不安がないわけじゃないのだから。
「香織…本当にいいの? 後悔しない?」
「…うん。廉君だから…」
「…ありがとう」
長く柔らかな髪を一房取り、誓いを告げるように口づける。
「たった今から君の全ては僕のものだ。
その心も身体も髪の一房までも…絶対に誰にも渡さない。
もうイヤだといっても僕から離れられないよ?
いいんだね?」
僕から視線を外す事無くコクリと頷く。
それを合図に、バスローブの紐をスルリと解いた。
どれほど愛しく思っているかを伝えたくて、何度も髪に指を滑らせる。
静かに瞳を閉じた香織に、ゆっくりと唇を寄せる…
ベッドがギシリと軋んだ―…



