理性を総動員してシャワーを止め、呼吸を整える。
それまで響いていた水音が止まると、ブース内には突然静寂が訪れた。
激しく鳴る鼓動だけが、やたらと五月蝿く聞こえる。
規則的に落ちる水滴の音が、まるでメトロノームのように耳に届いた。
妙な沈黙と絡み合う視線。
香織の前髪から滴る水滴が、鼻筋を通り、唇を伝っていく。
それが胸元へと吸い込まれていく様が、なんともエロティックで…
思わず視線を逸らすと、最後の理性で香織をバスタオルで包んだ。
「そんなに挑発しないでくれ。
僕だって男だよ?
この状態でそんな風に言われたら襲いたくなるだろう?」
昨日までならこんな台詞は軽い冗談でも言えなかったのに、今日は違った。
僕の中の何かが変わったのか…
それともいつもと違う雰囲気の香織に触発され大胆になっているのか…
だけど今日の香織は、僕以上に大胆で、どこかおかしかった。
「あたしを…欲しい?」



