切なげに伏せられる涙に潤んだ瞳。
ゆっくりと重なる唇。
冷たい身体とは対照的な熱い唇が、ネットリと誘うように纏わり付き、理性が飛びそうになる。
何度も唇を重ねたけれど、こんなに艶かしいキスは初めてだった。
僕の中の男を揺り起こすには十分すぎる刺激。
濡れたネグリジェが身体のラインに張り付き、まるでギリシャ彫刻のような美しさで僕を誘う。
角度を変えるたびに漏れる甘い溜息。
シャワーの音でさえも掻き消すことが出来ないほどに、二人の鼓動は大きく響いている。
いつもの香織とは違う。
何処か頼りなくて、誰かの支えがないと今にも消えそうに儚い。
それなのに僕の名を呼ぶその声は、艶かしいほどの色香を放ち理性を揺さ振ってくる。
脳内が痺れて、まるで催眠術をかけられた様に惹きつけられてしまう。
気がつけば、無防備にさらけ出された白い首筋まで、ほんの数ミリのところまで、唇を寄せていた。



