【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~


おばあちゃんはとても辛そうに、父が借金取りに追われていたらしい事実と、ショールの血は産まれたばかりのあたしが包まれていた為ついたものだと教えてくれた。

父は、まだへその緒がついたままの、産まれて数時間しか経たないあたしをショールに包みおばあちゃんに託したらしい。

雪のちらつく寒い夜、綺麗に洗って貰うことも無く、産着も着ずに、たった一枚のショールに包まれたあたしは、父の腕の温もりだけを頼りに命を繋いでいたという。

どんな事情があったのか詳しいことを話すことも無く、既に泣く力も無かったあたしを預けて消えた父の消息は、その日からわかっていない。


その後あたしは、父の妹夫婦に引き取られ、娘として育てられた。


事実を知って、ただでさえ不安定だったあたしは、そのショックに耐えられず、それから暫く声が出せなくなり、度々悪夢や発作的なヒステリーで苦しんだ。

そんなときはいつも、おばあちゃんの家の裏にある川に潜った。

水の中で川のせせらぎや、自分の鼓動を聞いていると、不思議と心が落ち着いてくれたからだ。

それが一種の精神安定剤のような役割をしてくれたのか、悪夢やヒステリーの発作は少しずつ治まっていった。

それでも、あたしの声はなかなか戻らず、おばあちゃんや両親の心配を他所に、相変わらず心を閉じ、事実を受け入れることが出来ないでいた。