部屋へ戻るとネグリジェを着た香織がプールサイドに立っていた。
思いつめた表情で水面を見つめている。
銀の月に照らされた水面が反射して、香織の横顔に陰影を作る。
温もりも優しさも感じられない冷たい横顔。
蒼白く照らされ、今にも水面に吸い込まれてしまいそうだ。
そこに居るのに、手が届かないような…
すぐ傍なのに、ガラス越しで見ているような…
まるで彼女が魂を持たない人形のような錯覚に囚われる。
ゾクリと背筋が寒くなった。
「香織…気分はどう? 少しは落ち着いた?」
出来るだけ平静を保って近づくと、香織はゆっくりと顔を上げた。
そして次の瞬間…
ユラリと傾いだ身体が月夜に反射する水面へと消えた



