【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~

別荘へと帰ってきたのは、昨日とほぼ同じ時刻だった。

まるで昨夜を再現するように、彼女は母屋の風呂へと行き、僕は自室でシャワーを浴びてから、プールサイドで彼女を待ちながら、昨日から今日までの事を考えていた。

かすり傷と少々の打撲だけで済んだのは、本当に奇跡と言って良いだろう。

あの時、彼に出会い駅への最短距離を知ることが出来、バイクを借りることがなかったら、香織は確実にこの世に存在していなかっただろう。

彼にはどんなに感謝しても足りないくらいだ。

返却場所を指定されたメモを見て、一つ溜息を吐く。

彼の連絡先は書かれていない。

いつ返しに行けばよいのかも分からないという事実に、今になって気がついた。

あの時は精一杯冷静なつもりでいたけれど、そうではなかったらしいと改めて自分を振り返る。

香織が無事だったのは、全て彼のおかげだ。

彼ならどんなときにも冷静に判断し、瞬時に最善の判断を下すことが出来るのかもしれない。

彼のような人が僕らの味方だったら…