「百合子は…俺の父親の姉が不倫の末、孕んだ子なんだ。
伯母は男と逃げるつもりでいたらしい。
だけど結局男に捨てられ絶望した伯母は、生まれたばかりの百合子と心中を図った。
百合子だけが奇跡的に助かったんだが…瀬名家としては娘のスキャンダルを明るみに出来ない。だから父が自分の子として引き取ったんだ」
「そんな事が…」
「俺はずっと自分の妹だと信じていたからな。
知ったときはショックだったよ。
養女だって事実より、百合子が余りにも不憫でな。
伯母が不貞など働かなければ、良家の娘として生まれ幸せに育つはずだったのに、一族の恥を隠すため瀬名の娘になったばかりに、お前と婚約する羽目になった」
紀之さんが怒りを叩きつけるように、ハンドルを拳で叩くと、銜えた煙草のフィルターがギリッと嫌な音を立てた。



