姿の見えない香織を探して寝室のドアを開ける。

そこには…

僕のベッドで枕を抱きしめ眠る香織の姿があった。

ほんの少し前、僕の部屋で眠る彼女に驚き、暴走しそうな感情を押さえつけた事がずっと昔の事のようだ。

あの時は、こんな気持ちで別れる日が来るなんて思いもしなかった。

今僕のベッドで眠る彼女はもう僕のものではない。

どんなに愛しくても、もう触れることすら叶わないのだ。

数時間後、彼女はもうここにはいない。

新学期が始まり、あの角を曲がっても、僕だけの香織はもうどこにもいない。

心が痛くて、切なくて、身体の芯が固まっていくような絶望感に襲われる。

苦しくて、哀しくて、いっそこの身を引き裂いて楽になれたらと思う。

翔という人は、こんな思いをずっと心に秘めていたのだろうか。


母さんを最後まで見守って逝った人


彼は…どんな想いを胸に抱いていたんだろう


どんなに切ない気持ちで母さんを愛し続けたんだろう


死の間際に望んだことは…


やはり母さんの幸せだったんだろうか…