香織が荷物を纏める為に部屋へ戻ったのを見届けてからリビングへ行くと、夜が明けて間もないというのに、両親は既に起きていた。
「おはよう。父さんがこんなに早く起きるなんて珍しいね」
「ああ、廉おはよう。俺だって緊張するんだよ。
なんたって大切な一人息子のデビューを明後日に控えているからな。
グースカ眠れる訳ないって。…なっ?俺だって父親らしいとこあるだろ?」
戯(おど)けてみせたが、本当は香織の事が大きな理由なのだろう。
多分父さんも、香織にこれほどの危害を加えられるとは考えなかったのだと思う。
何も言わないが、香織の事、いや、今後の僕らの事を凄く心配しているのだろう。
「廉、寝ていないの?」
コーヒーを差し出しながら表情を曇らせる母さんに、曖昧な笑みをみせ、カップを受け取り口を付ける。
いつもと同じコーヒーが、何故か今日はやたらと苦く感じた。
「……うん。眠れなかった。一晩中香織と話していたんだ。
出逢ってから今日までの楽しかったこと」
コーヒーをテーブルにおいて両親に向き直ると、二人は黙って次の言葉を待った。
アンティークの時計の規則的な音が、夏の早朝の爽やかな空気を震わせる。
この部屋だけ時間の流れが違うような錯覚を覚えるほど、静かに時を刻む音だけが響く。
香織の様々な表情が脳裏に浮かび、時を刻む音に過去へと引き戻されるような感覚に包まれた。
静かな時間がゆっくりと流れていく
「…僕達、別れることにした」
自分でも信じられないほど静かな声が部屋に響く。
時計が、時を刻む音を止めた。
「おはよう。父さんがこんなに早く起きるなんて珍しいね」
「ああ、廉おはよう。俺だって緊張するんだよ。
なんたって大切な一人息子のデビューを明後日に控えているからな。
グースカ眠れる訳ないって。…なっ?俺だって父親らしいとこあるだろ?」
戯(おど)けてみせたが、本当は香織の事が大きな理由なのだろう。
多分父さんも、香織にこれほどの危害を加えられるとは考えなかったのだと思う。
何も言わないが、香織の事、いや、今後の僕らの事を凄く心配しているのだろう。
「廉、寝ていないの?」
コーヒーを差し出しながら表情を曇らせる母さんに、曖昧な笑みをみせ、カップを受け取り口を付ける。
いつもと同じコーヒーが、何故か今日はやたらと苦く感じた。
「……うん。眠れなかった。一晩中香織と話していたんだ。
出逢ってから今日までの楽しかったこと」
コーヒーをテーブルにおいて両親に向き直ると、二人は黙って次の言葉を待った。
アンティークの時計の規則的な音が、夏の早朝の爽やかな空気を震わせる。
この部屋だけ時間の流れが違うような錯覚を覚えるほど、静かに時を刻む音だけが響く。
香織の様々な表情が脳裏に浮かび、時を刻む音に過去へと引き戻されるような感覚に包まれた。
静かな時間がゆっくりと流れていく
「…僕達、別れることにした」
自分でも信じられないほど静かな声が部屋に響く。
時計が、時を刻む音を止めた。



